最初の一言

アポ取りが苦手な営業は、自分だけの「最初の一言」をつくろう!

スムーズな会話を始めるためのオリジナルな言葉を育てるヒント集。

最終更新日:2025年6月17日

なぜ、アポ取りは“怖い”んだろう?

突然ですが、営業のみなさんに質問です──

あなたは「アポ取り」が得意ですか?

営業としてのキャリアが長い方でも、
アポ取りに対して苦手意識を持っている人は、少なくないはず。
一般的に“営業”というと、「明るくて、社交的で、押しが強い人向けの仕事」
というイメージがあるかもしれません。

でも実際には、そうでない人が営業を担っているケースも多くあります。
「本当は人と話すのは得意じゃない」
「自信が持てないままメールの文面を打っている」
──そんな声も、決して少なくありません。

その理由は、単に「断られるのが怖い」から、だけではありません。

  • 相手の反応が想像できずに緊張する
  • 忙しい相手に迷惑をかけている気がする
  • 自分の話が価値あるものに思えない
  • “営業っぽさ”を出すことに抵抗がある

といった、心理的ブレーキのかかる要因が複雑に絡んでいるのです。
だからこそ、“最初の一言”は、
自分の言葉で、気負わず、でもちゃんと届くものにしたいものです。


“最初の一言”は、なぜそこまで重要なのか?

アポ取りは、相手にとって「予期せぬ接点」です。
こちらは“ご挨拶”や“提案”のつもりでも、相手からすれば
「誰?」「なぜ私に?」と身構えてしまうのは当然です。

そんなとき、最初の一言で、

  • 相手の状況に寄り添えている
  •  一方的ではない
  • 自分ごととしてもらえそうな空気感がある

──そんな印象を与えることができたら、
「ちょっと話してみてもいいかも」と、相手の心の扉が少し開きます。

この段階では、まだ“日程調整”の話ではありません。
あくまで、「まず聞いてみようかな」「この人の話、ちょっと気になるな」と
相手の温度感に合わせることで
“話を聞いてみようかな”と思ってもらえるようにすることが、
いわゆる“リード”へのファーストコンタクトの要です。

リード(Lead)とは?
営業における「見込み顧客」のこと。自社の商品やサービスに対して興味・関心を持ってくれる可能性がある相手のことを指します。最初の接点づくりや、コミュニケーションの入口で使われることが多い用語です。


3つのヒント:「こう言えばいい」ではなく、「こう考えてみよう」

ここから紹介するのは、よくある“テンプレ”ではありません。
「こう言えば必ずうまくいく」という魔法の言葉ではなく、
“自分の言葉を見つけるためのヒント”として、3つの視点を紹介します。

【ヒント①】思い出してもらう“きっかけ”を先に置く

営業の最初の一言で大事なのは、相手に「誰だったか」を思い出してもらうこと。
何かしらの接点があった場合は、“脳内検索”を助ける情報を先に提示しておくことで、
相手の警戒心はぐっとやわらぎます。
「先日〇〇の件でやり取りさせていただいた●●です。
 ひとつだけ、ご相談したいことがありまして──」
自分を思い出してもらえさえすれば、その後のやりとりのハードルが一気に下がります。

【ヒント②】共通言語を提示する

相手が「これは自分の話だ」と感じてくれるきっかけになるのが、“共通の関心ごと”です。
営業というより、「同じテーマについて話す仲間」という雰囲気をつくるのがポイント。
相手が自分に関係のある話だと感じれば、応答率も自然と上がっていきます。
そこでここでは、少し表現を工夫するだけで
“ぐっと話しやすくなる”言い回しの型
を3つご紹介します。

型1:気づきベースで軽く投げかける

「最近、◯◯って話題になることが増えてるんですが、
 
実際の現場ではどう感じておられますか?」

型2:共感トーンで“気になってて…”と振る

「◯◯って、いま業界全体で注目されてる印象があるんですが、
 
●●さんのところでも話題になったりしてますか?」

型3:“耳にした”ぐらいの軽さでスッと

「最近お話ししてる中でよく出てくるのが◯◯でして…
 そのあたり、●●さんもご関心おありでしょうか?」

どの型でも「話したい」ではなく「聞かせてほしい」の姿勢が重要。
あえて“やや控えめ”な表現を使うことで、
相手との距離感を自然に縮めることができるのです。

【ヒント③】「ちゃんと見てます」感をにじませる

大量配信の営業メールが増える中で、
「これは自分に向けられたメッセージだ」と思ってもらえる一言は、
相手の心のハードルをグッと下げてくれます。
「御社のWebサイトを拝見し、●●の取り組みに共感しました。
 
一方的なご連絡にならないよう、簡単なご相談を兼ねてご連絡差し上げています」

「数打ちゃ当たる営業ではない」ことを示すことで、
“見てくれている”“共感してくれている”という手触りを感じさせることができれば、
受け手の反応は大きく変わります。


テンプレは“使う”より“育てる”

ここまでこの記事を読んできて、
「結局、どうメールを書けばいいの?」
「電話でどう話せばいいの?」
と思った方も多いかもしれません。
そこで少しだけ、“自分の言葉に育てる”視点をご紹介します。

言い換え・調整のヒント

  • 「〜という話をよく聞くので」→「最近気になっていて、自分でも調べていて」
  • 「お話しできればと思い」→「ご迷惑でなければ少しだけでも、ご意見伺えたらと」
  • 「先日〜」→「この間少しだけやりとりさせていただいた件で──」

応用パターン:関心や共感をにじませる
相手の業界やサービスに対して関心を持っていることを、
あえて“やや感想寄り”でにじませる言い回しも効果的です。
たとえば:

  • 「個人的にも●●に関心があり、御社の発信は以前から注目していました」
  • 「同じ業界に携わる中で、御社のこの取り組みは印象に残っていて──」
  • 「拝見していて、素直に“こういう考え方があるのか”と感じました」

“ファンです!”という熱さを前面に伝えるよりも、
“静かな共感”や“観察している空気感”の方が、相手の警戒心を溶かします。


まず、1通だけ、自分の言葉で

“アポ取りが怖い”という感覚は、あなただけのものじゃありません。
でもその「怖さ」の正体が、
実は「最初の一言に迷っていること」だとしたら──
今日紹介したヒントをきっかけに、
「これは、自分でも言えそう」と思える言葉をひとつだけ、見つけてみてください。
そしてそれを、まずは1通、送ってみてください。
自分の言葉で踏み出したその一歩が、アポの壁を越える力になります。

この記事を書いた人

渡辺 純

 

リコーが運営するオウンドメディアの編集長。

『RICOHビジネスクラウド:アポ取り』のプロダクトマネージャー。


新人の頃はリコージャパンで新規開拓の営業を経験し、雑談力を武器に独自の営業スタイルを確立。その後、リコーでクラウドソリューションの海外マーケティングを担当し、海外支社に対して商品立ち上げや販売施策を展開。学生時代はオランダで10年ほど過ごした帰国子女。趣味はバドミントン(社会人大会に出場)とスノーボード。

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