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SPIN話法って、結局どうやって使いこなせばいいの?

定番のSPINだからこそ、使いこなすことで強力な武器になる。

最終更新日:2025年7月4日

SPIN話法、使いこなせてますか?

SPIN話法といえば、営業の世界では定番の“ヒアリング技術”として
紹介されることの多いフレームワークですが、
「知ってはいるけど、実際に使いこなせている気がしない…」という方も少なくないのでは。

理屈は理解できるけれど、現場での会話になると、なぜかスムーズに展開できない。
相手の心を動かせていない気がする。
結果、「結局いつも通りのトークになってしまう…」と感じたことはありませんか?

この記事では、SPIN話法を“知っている”から“使える”へと進化させるために、
特に「実践でつまずきやすいポイント」に焦点をあてながら、
今すぐ営業現場で再現できるトークのヒントを紹介していきます。


なぜ、SPIN話法は“わかりやすいのに難しい”のか?

SPIN話法は、4つの要素からなる質問フレームです。

  • 【S】Situation(状況)
  • 【P】Problem(問題)
  • 【I】Implication(示唆)
  • 【N】Need-Payoff(解決後の利益)

この順番で質問を重ねていくことで、
相手のニーズを自然に引き出し、課題を解決する提案へとつなげていく。
そんな理想的な営業トークを“設計図”として描けるのが、SPIN話法の強みです。

とはいうものの現実には、
「思ったように会話が進まない」「問題をうまく引き出せない」「相手が乗ってこない」など
さまざまな“つまずき”が発生しやすく、そこで挫折してしまう人も多いのが実情です。

では、なぜつまずいてしまうのか?
次の章では、特につまずきやすい【P】と【I】に注目しながら、
現場での“あるある”を紐解いてみます。


いちばん難しいのは、【P】と【I】のあいだ

【S】=現状確認は、たいていスムーズにできます。
「今どんな仕組みを使ってるか」「どの部署が関わっているか」など、
事実ベースで聞くのは比較的ハードルが低いからです。

でも──
「その状況で困っていることは何ですか?」
「具体的に、どんな影響が出ているのでしょうか?」
このあたり、つまり【P】→【I】のあたりで、
急に会話が詰まってしまうことが多いのではないでしょうか?

理由のひとつは、「相手が“問題”を自覚していない」ケースが多いこと。
目の前の業務はこなせているし、大きな不満があるわけでもない。
でもよくよく聞いてみると、業務負荷が高かったり、部門間連携がスムーズでなかったりする。
つまり、「問題の芽」はあるのに、本人がそれを“問題”として認識していない。
この状態で「困っていることは?」と聞かれても、
「特にありません」と返されてしまうのは自然なことなのです。

営業トークで【P】や【I】を引き出すには、
相手の“無自覚な不満”に光を当てる質問設計が必要になります。


【I】を引き出す、問いかけのフレーズ

【I】=Implication(示唆)は、
問題が放置された場合の“影響”に相手自身が気づくよう促す問いかけです。
確かにこれ、いきなりは難しいですよね。
たとえば、こんな聞き方はどうでしょう?

  • 「その確認作業、1件にどのくらい時間がかかるんですか?」
  • 「もしその作業が10分短縮できたら、どんな業務に回せそうですか?」
  • 「部署をまたいで確認が必要になる場面って、どのくらいあります?」

こうした“問い”は、相手の現状に寄り添いながら、
「じつはそこが負担なんじゃないか」と自覚を促すトリガーになります。
決して「それって効率悪いですよね?」と否定するのではなく、
あくまで「そこが少し変わるだけでも、日々の仕事が楽になるかも」という示唆を与えること。
それが【I】のフェーズで必要なトーンです。


「SPIN話法」は“順番”で考えすぎないのがポイント

SPIN話法の落とし穴──
それは、「順番通りに進めなければいけない」と思いすぎてしまうことです。

もちろん、【S】→【P】→【I】→【N】という流れが理想ではありますが、
実際の会話はそんなに整然としているわけではなく、もっと雑然としているものです。
ときには【S】と【P】が混ざったり、いきなり【I】っぽい話が出てきたりすることもあるでしょう。

そこで、「あっ、いま【I】の話が出たな」と気づけるようになれば、それでOK。
大事なのは、「いまどのフェーズの話をしているか」にアンテナを立てておくこと。
順番どおりでなくても、会話全体がSPINの要素をカバーしていれば、それで十分なのです。


“自分のSPIN”をアップデートするには?

SPIN話法を現場で使いこなすために、
一番の近道は「過去の商談をSPINで振り返ること」です。

  • このとき【S】で聞きそびれたのは何だったか?
  • 相手が話していたことの中で、【P】や【I】になりそうなポイントはどこか?
  • 【N】までたどり着けなかったとしたら、どんなステップが抜けていたのか?

こうした“ふりかえり”を通して、自分なりのSPINパターンが見えてくるようになります。
さらに、商談内容を共有する際や、チームでのナレッジ共有にも
SPINの視点を使ってみると、「共通言語」としても機能しやすくなるはず。
ぜひ一度、日々の仕事の中で試してみてください。

この記事を書いた人

渡辺 純

 

リコーが運営するオウンドメディアの編集長。

『RICOHビジネスクラウド:アポ取り』のプロダクトマネージャー。


新人の頃はリコージャパンで新規開拓の営業を経験し、雑談力を武器に独自の営業スタイルを確立。その後、リコーでクラウドソリューションの海外マーケティングを担当し、海外支社に対して商品立ち上げや販売施策を展開。学生時代はオランダで10年ほど過ごした帰国子女。趣味はバドミントン(社会人大会に出場)とスノーボード。

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