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新規プロジェクト担当者、必読! #11

仲間を“浮かせない”。プロジェクト共創者を孤立させない文化設計

巻き込んだあとの動きが、プロジェクトの行方を左右する。

最終更新日:2025年10月8日


「あの人、なんか浮いてない?」──その空気がプロジェクトを壊す

新しいプロジェクトを立ち上げて、共感してくれた数人を巻き込むことができた。
ようやく形になってきた──そんな矢先、ふと耳に入ってくるこんな声。

「◯◯さん、最近あのプロジェクトばっかりじゃない?」
「うちのチームのこと、もう関心ないのかな」
「あの人、なんか“あっち側の人”って感じ…」

もちろん、本人のせいではありません。
むしろ巻き込んだ側としては、「すごく助けられてる」「仲間として心強い」存在のはず。

でも、その人が所属部署や周囲の文脈から浮いてしまっている
これは、プロジェクトにとっても本人にとっても、静かに進行するリスクなんです。


孤立はプロジェクトの信頼を削る“静かな摩耗”

共創型のプロジェクトは、「一部の人だけが盛り上がってる」と見なされた瞬間、
社内的な信用がすっと引いていく危うさを持っています。

  • 手伝ってくれている人が「変わり者扱い」される
  • プロジェクトの温度が、社内の空気と乖離する
  • やがて本人も「ここに関わってよかったのかな…」と感じてしまう

だからこそ、巻き込む側が意識すべきなのは──
「巻き込んだあとの文化接続」=“浮かせない設計”です。


“浮かせない文化設計”の3つの工夫

1.上司を“見えない共創メンバー”にしておく

たとえば、開発チームからひとり巻き込んだ場合。
その人に声をかけるだけでなく、
事前 or 並行してその上司にもひとこと伝えておくことが重要です。

  • 「◯◯さんの知見を、少しだけお借りしたくて」
  • 「上流設計の段階で、現場目線の意見がもらえて助かってます」

これだけで、上司は「ああ、ちゃんと目的があるんだな」と理解してくれます。
それにより、そのメンバーも“勝手に参加してる人”ではなく、
“チーム公認の関与者”として見られる。
文化との接続点は、本人ではなく“本人の上流”にもあることを忘れずに。

2.自チームとの“橋渡し”をつくる

巻き込まれた側が、
「このプロジェクト、うちのチームにどう役立つんだろう?」と
感じた瞬間、温度は下がります。

逆に、自チームとの接続点が見えると、
“うちの人間が関わっている意味”が社内に浸透します。

  • プロジェクトで得た知見をチーム内に持ち帰る場をつくる
  • Slackや社内報で、「◯◯チームと連携したことで進みました」などの言及を入れる
  • 成果物や途中経過を、協力チームにフィードバックする

「ここで得たものを持ち帰れる」感覚が、本人とチームの心理的な橋をつくります。

3.仲間の“活躍”を、そっと社内に可視化する

プロジェクトの中で共創メンバーがいい動きをしてくれたとき、
それをあえて外向きに、そっと言語化することが大事です。

「このフェーズ、◯◯さんの提案がすごく活きました」
「△△さんがいたから進んだ場面、実はすごく多いんです」

これをSlackや社内報などで発信することで、本人の貢献が社内に流れ出す。

  • 周囲に「なんか活躍してるっぽいぞ」の空気ができる
  • 本人も「ちゃんと評価されてる」と感じられる
  • 結果、“浮いてる人”ではなく“チームを代表して関わってる人”として認識されていく

感謝は、相手に直接言うだけじゃなく、社内空間にも流しておくとより強まります。


プロジェクトは“巻き込んだあと”が勝負

巻き込むこと自体は、できる人なら意外と簡単です。
でも、そのあとどうやって関係性を守るか、
どうやって文化に接続するか
は、意識しなければ自然には起きません。

  • 協力者を孤立させない
  • プロジェクトと社内文化を断絶させない
  • 「勝手にやってる」ではなく「組織の中でやってる」状態にする

この視点を持てるかどうかが、共創の空気が根づくか、弾かれるかの分かれ目になります。
上手くいけば、プロジェクトが社内に根を張るスピードも加速しますが、
そこを疎かにしてことで、たった一人の“浮いてしまった仲間”から、
そっと静かに信頼を失っていくこともあります。

だからこそ──
仲間の背中に、組織とつながる橋をかける。
それが、あなたに求められている“共創設計力”なのです。

この記事を書いた人

渡辺 純

 

リコーが運営するオウンドメディアの編集長。

『RICOHビジネスクラウド:アポ取り』のプロダクトマネージャー。


新人の頃はリコージャパンで新規開拓の営業を経験し、雑談力を武器に独自の営業スタイルを確立。その後、リコーでクラウドソリューションの海外マーケティングを担当し、海外支社に対して商品立ち上げや販売施策を展開。学生時代はオランダで10年ほど過ごした帰国子女。趣味はバドミントン(社会人大会に出場)とスノーボード。

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