他者の声を“物語”に変えると、上司は動き出す
資料ではなく“語りたくなるストーリー”で上司を動かす。
最終更新日:2025年10月22日
「数字だけ」では、上司は動かない
『資料より“空気”が大事?上司に効く共感の伝え方』の記事では、
「プレゼンは上司が“その先”に語りたくなるように設計すべきだ」と紹介しました。
でも、そう言われても、
「どうやって“語りたくなる言葉”を用意すればいいの?」という疑問が湧きますよね。
その答えのひとつが、「他者の声をストーリーとして伝える」 という方法です。
データに裏付けられた論理的な資料よりも、
他者のリアルな声をベースにしたエピソードの方が
説得力を発揮できるケースもあります。
この記事では、その理由と具体的な方法を整理しながら、
上司を動かすための“ストーリーのつくり方”を解説します。
なぜ「他者の声」が効くのか
どれだけロジックを積み上げても、上司が首を縦に振らない瞬間はあります。
これは数字や資料が信用できないわけではなく、
「判断のための最後の一押し」が欠けているからです。
その顕著な例ともいえるのが、組織文化としての“前例”信仰です。
日本の組織では「前例があるかどうか」が意思決定の大きな要因になります。
未知の挑戦を受け入れるには、
「すでに誰かが試してうまくいった」という安心材料が不可欠です。
その代理を果たすのが、他者の声です。
数字には正確性はあっても、意外と心に残りにくいもの。
一方で「顧客が“もう他のツールに戻れない”と言っていた」などの具体的な声は、
短い一言でも、エピソードとして強烈な印象を残します。
- 上司は「数字」より「前例」に安心する
- 他者の声は“前例の代理”として機能する
- 短いフレーズでもストーリーとして記憶に残る
声を“ストーリー”に変えて伝える
ただ単に、「〇〇さんがこう言ってました」と伝えるだけでは弱い。
大事なのは、その声を ストーリーに編集して伝えること です。
コツとしては「3ステップで物語をつくる」こと
- Before:困っていた状況や背景
- Turn:工夫や気づき、試したこと
- After:その結果どう変わったか
この流れに当てはめるだけで、一言の声が立体的なストーリーになります。
例えば「営業資料の長さに関する声」を活かしてストーリーにすると・・・
- Before:「お客様が分厚い資料にうんざりしていた」
- Turn:「営業担当が思い切って資料を半分にした」
- After:「結果、初回商談の成約率が20%上がった」
これなら「資料を短くした方がいいらしい」よりも、説得力が段違いです。
「困っていたこと」から始め、「小さな工夫」をはさみ、
最後は「数字」や「変化」で締める。
この流れを意識することが、ストーリー化のコツと言えます。
“語りたくなる”言葉を仕込む
上司や提案先の担当者は、自分の上司や他部門に話を伝えるときに、
そのまま使えるフレーズを探しています。
だからこそストーリーの中に、短くてキャッチーな
引用したくなる一言を入れておくとさらに効果的です。
プレゼンの拡散力は一気に上がります。
「でも、そんな声をどこで拾えばいいの?」そう思う方もいますよね。
実は、日常のあちこちに素材は転がっています。
例えば…
- 展示会やセミナーで耳にした一言
- 商談中に顧客がぽろっと漏らした感想
- 社内チャットに流れた失敗談
- ユーザーインタビューで出てきた予想外の反応
どれも“ちょっとした声”ですが、編集次第で強力なストーリーになります。
こういった貴重な素材をスルーしてしまわないためにも、
会議後に「印象に残った一言」をメモしておいたり、
Slackに「小ネタ共有」チャンネルを作っておく、
あるいは、商談報告に「顧客の声」欄を設けるなど、
習慣化する仕組みを作るだけで、普段は流れていく言葉をストックできます。
自分の言葉と他者の声を使い分ける
『資料より“空気”が大事?上司に効く共感の伝え方』の記事では
「自分の言葉で空気をつかみ、共感を生むこと」がポイントでした。
この記事では、
「他者の声をストーリーに変えることで、
共感を外部から借りてくる」方法を紹介しました。
どちらも共通するのは、
「数字や資料だけでは上司は動かない」という現実です。
大事なのは「共感をどう設計するか」。
その答えは、自分の言葉と他者の声、両方を使い分けることにあります。
こうして用意されたストーリーは、
上司の背中を押すだけでなく、その先へと語り継がれていきます。
次にプレゼンを準備するときには、ぜひ数字や資料に加えて
「誰かの声を物語にして語る」という視点を取り入れてみてください。
上司を動かす力は、
あなたの周りにある“他者の声”の中に眠っています。