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“次につながる”ヒアリングシナリオの作り方

温度感と関心度でつなぐ、質問ストーリー設計。

最終更新日:2025年12月5日


質問しても「次につながらない」理由

商談のあと、録音を聞き返してみて
「結局、何がわかったんだろう…」と感じたことはありませんか?
質問はたくさんした。メモも取った。けれど、提案には結びつかない。
その違和感の正体は、ヒアリングの“設計”にあります。

営業のヒアリングは、単なる情報収集ではありません。
相手の温度感と関心度を読み取り、対話の中で「信頼の文脈」をつくっていくプロセスです。
質問をどう組み立てるかで、商談の方向性も、関係の深まり方も変わります。


「温度感×関心度」で考えるヒアリング設計

ヒアリングをストーリーとして設計するために、
まず意識したいのが「温度感」と「関心度」という2つの軸です。

この2つを座標軸に置いてみましょう。
横軸に「関心の深さ」、縦軸に「温度感(感情の高さ)」をとると、
相手がどのゾーンにいるかで、聞くべき質問のタイプが変わります。

たとえば──
・温度は高いが、関心が浅い相手には「共感を育てる質問」
・関心は高いが、温度が低い相手には「具体化を促す質問」
・両方とも高い相手には「導入をイメージさせる質問」

つまり、質問とは「相手の位置を確かめながら進めるナビゲーション」です。
話の流れに“地図”を持つだけで、ヒアリングは一方通行ではなくなります。


次につながる3つの質問ストーリー

ここからは、実際に「温度感×関心度」を踏まえた3つの質問パターンを紹介します。
それぞれに心理的な裏づけをもたせることで、より“次につながる”会話設計ができます。

雑談で終わらせない一問──“親近効果”を活かす

雑談の中で距離を縮めたあと、もう一歩踏み込む質問を入れると、
相手の心は開きやすくなります。
たとえば──
「そういえば、前回お話しされていた◯◯の件、その後どうなりました?」

このような“過去の話題のリマインド”は、心理学でいう親近効果を高めます。
相手は「覚えていてくれた」という安心感から、自然と会話を深めてくれます。

雑談は「目的のない話」ではなく、「信頼を育てる場」。
その後に続く質問をどう置くかで、会話の質が変わります。

課題を言語化させる問い──“内省”を引き出す

ヒアリングのゴールは「相手の言葉で課題を語ってもらうこと」です。
そのためには、すぐに解決策を提案するのではなく、
相手の考えを自分で整理できるような内省促進の質問を挟むのが効果的。

たとえば──
「もし◯◯がうまくいったら、どんな状態が理想ですか?」
「逆に、今いちばん手をつけづらい理由は何でしょう?」

人は質問されることで思考を整理します。
“答えるために考える”時間こそが、信頼の形成プロセス。
焦らず沈黙を待つことも、営業のスキルのひとつです。

導入を想像させる問い──“メンタルシミュレーション効果”

最後に、相手が行動に移るイメージを描けるようにする質問を。
心理学では、具体的な未来像を描くことで行動意欲が高まることを
メンタルシミュレーション効果と呼びます。

たとえば──
「もしこの仕組みを導入したとしたら、最初にどの業務で試してみたいですか?」
「現場で使うとしたら、誰が最初に便利だと感じそうですか?」

こうした質問は、相手の頭の中に“小さな未来の物語”を生みます。
そしてその物語こそが、“次のアポ”につながる火種になります。


ヒアリングは「信頼設計」そのもの

営業におけるヒアリングとは、信頼を設計する技術です。
相手の話を引き出す質問には、意図と構造があります。

温度感を感じ取り、関心の深さを見極め、
適切な順序で問いを重ねることで、
ヒアリングは「会話」から「共創」へと変わります。

信頼は、質問の中で生まれる。
それが、“次につながる”ヒアリングの本質です。

この記事を書いた人

渡辺 純

 

リコーが運営するオウンドメディアの編集長。

『RICOHビジネスクラウド:アポ取り』のプロダクトマネージャー。


新人の頃はリコージャパンで新規開拓の営業を経験し、雑談力を武器に独自の営業スタイルを確立。その後、リコーでクラウドソリューションの海外マーケティングを担当し、海外支社に対して商品立ち上げや販売施策を展開。学生時代はオランダで10年ほど過ごした帰国子女。趣味はバドミントン(社会人大会に出場)とスノーボード。

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